根の治療(根管治療)とは?

 

根管治療とは、リーマーやファイルと呼ばれる器具で細菌に感染してしまった歯や神経を徹底的に取り除き、歯の内部を綺麗にする事で根の先にある病変を治療するものです.

 

 

 

なぜ根の治療が必要なのか?

 

深い虫歯が歯の神経にまで進行した場合に、細菌に感染してしまった神経を除去したり、すでに神経の無い歯の根っこの先に膿みがたまり、周りの骨を溶かしてしまった場合に、この治療が必要になります.

 

 

根の中を綺麗にするのは大変

 

一度細菌が感染してしまった歯の根っこの中を徹底的にきれいにすることは、かなり大変なことです.

なぜなら、根っこの中は直接見ることができず、根っこの数や根っこの中の神経が通る管の数や形にはかなり個人差があるからです.人によっては神経の通る管が網目状に分岐しており、とても複雑な形態をしている場合があります.

 

顕微鏡を用いた根管治療 
Root canal morphology and its relationship to endodontic proceduresより引用
根の治療をしっかり行う良い歯科

根の治療は非常に難しい治療です

 

根の治療を成功させる3つのポイント

 

(ラバーダム防湿

根管治療は、細菌を減らす事で身体の治癒力を引き出す治療方法なので治療中に唾液が入ってしまうと再び菌が増殖してしまい治らないもしくは再発の原因になってしまいます.それを防止する為に歯の周りを取り囲むゴム製の防御膜を設置する事で治療中に唾液が根の中に入らないようにする必要があるのです(米国では常識)

日本では、根管治療に力を入れている先生の中にも、ラバーダムを使用されない先生はいらっしゃいますが、成功率や安全を考慮すると、使用した方がよいことは論文からも明らかです.

 

 

顕微鏡の使用(マイクロエンド)

根管治療は非常に複雑で細かい繊細で根気のいる治療です.今までは、術者の経験と勘をたよりにあやふやな診療を行ってきました.しかし、肉眼では確認できない汚れや細菌感染の見落としが多く治療後、数年で再発するケースが多く認められました.

そこで、清水歯科藤沢院では、歯を出来る限り抜かない診療を実践する為に顕微鏡を全ての根管治療で使用しています.

 

 

顕微鏡診療 根管治療

 

専門ドクターによる診療

顕微鏡歯科治療を専門にするドクターによる治療である事が非常に重要です.

顕微鏡は相応の修練を必要とする治療技術で,一朝一夕で身に付く技術ではありません.それでは、使用例を見ながら顕微鏡診療の効果を見ていきましょう.

 

 

ラバーダム?今までされた事ないですけど??

 

根管治療を行う際に、患者様にラバーダムについてご説明すると、ほとんどの方が、「そんなことをするのは初めてです」とおっしゃいます。なぜ、ラバーダムを行わない歯科医院が多いのか? それはやはり、日本の根管治療における保険点数が低すぎることが影響しているのだと思います。更に平成20年の保険改正により、ラバーダムの保険点数自体が廃止されたため、実質無料となりました。つまり、ラバーダムを行っても行わななくても保険治療の点数が同じになるため、本来、歯科医師であれば誰もが、使用するべきだと大学で教わったはずのラバーダムを、時間や材料の節約のため、これまで以上に省略されることが多くなると思われます.

 

 

 

根管治療に力を入れているクリニックを探す為には?

患者様にとって、根管治療は歯科治療の中でも、治療中に何をやっているか、治療がうまくいったのかご自分では目に見えないため、きちんと説明を受けなければ、非常にわかりにくい治療だと思います。

 

根管治療は歯の寿命を直接左右するとても重要な治療のため、治療を受けられる際は、事前にホームページ等でよく調べ、根管治療に熱心に取り組んでいる歯科医院にかかっていただきたいと思います。以下に根管治療を熱心に取り組んでいる歯科医院を選ぶポイントをまとめましたので、ご参考にして下さい.

 

 

根管治療に力を入れている歯科医院選びのポイント

 

① 事前に、治療を行う歯の状態や治療法について説明してくれる.

② 治療前後に必ずレントゲンを撮る.

② 感染対策、滅菌システムに力を入れている.

③ 治療の際にラバーダム防湿を行っている.

④ 歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を必ず使用している.

⑤ 1回の治療時間がある程度余裕をもって確保されている.

 

 

 

 

一回の治療時間が長い理由

 

以上述べてきたように、根っこ治療は非常に複雑な治療である上に、治療の精度を上げるためにはラバーダムをかけたりといった下準備が毎回必要です.そのため1回の治療にある程度の時間(約1時間半〜2時間)が必要になります.

 根っこの中の細菌除去が不十分なまま、最終的な詰め物をし、その上に被せ物をセットしてしまうと、根っこの中で取り残された細菌が後々増殖してトラブルが起き、再治療が必要になります.その場合、根っこの上にどんなにいい被せ物が入っていたとしても、その土台が細菌感染を起こしているため、せっかく作った被せ物まで作り直すことになります.

 また、根管治療は、たとえマイクロスコープを用いた精度の高い治療であっても、治療の度に少なからず歯質を削るため、再治療になる度に歯は薄くなり、歯の強度も下がってしまいます。最初の根っこの治療がいかによい精度で行われるかが非常に重要で、それにより歯の寿命も大きく変わってきます.

 

 

根管治療に力を入れている理由

① できるだけ再治療を受けていただきたくない. 

② 土台の治療が不十分なまま被せ物を作るべきではない.

③ 可能な限り歯を残したい.

 

 


Case1

30歳女性 定期検診の為来院  精密検査の結果上の奥歯に根の病気が見つかった患者さまです.

 

一見すると、病気がないように見える綺麗なお口の中ですが、レントゲン写真とお口の写真より病気を早期に発見できました.

まず、被せ物をはずし肉眼で確認した写真です.(等倍)続いてマイクロ画像です.汚れを取り忘れている肉眼では分かりにくい根の穴を見つけました.

a)(再発と治療を成功させる為にまずラバーダム防湿します)

b) 古い根の薬と汚れを除去します.

c)菌を少なくする薬剤で徹底的に洗浄します.この行程もラバーダム防湿をしないで行うと危険なのでラバーダムは必須です.

d)根の中がすっかり綺麗になった所で最終的な根のお薬を隙間無く詰めます.

 

 

Case2

36歳 男性 3年前に治療を受けた所が痛む、熱いもので痛みがでる

まず、精密検査を行い原因を探った所、右下の一番奥の歯の中に治療器具が折れて残っているのと、根の先端に膿みの袋が確認できました.

 

a)今回は、歯が歯肉より下にしか無いためこのままではラバーダム防湿ができない為、最初に歯の補強を行いました(手間をかけてでも必ずラバーダム防湿は行います.この有無が歯が残るかどうかの鍵と言えます)

b)ラバーダム防湿を行い

c)汚れを取り除きました

d)根の中に折れた治療器具が確認できました(マイクロ画像)  

e)徹底した洗浄を行います

f)膿みが出なくなり、根の中がすっかり綺麗になった所で最終的な根のお薬を隙間無く詰めます

 

 

Case3

 

43歳 女性 定期検診で来院 時折左上の奥歯が痛む事がある

まず、精密検査を行い原因を究明(間違いのない診療の為、時間をかけて行っています)した所左上奥歯に亀裂が入っている事が疑われた為、

冠をはずさせていただき、中を確認した所 歯に亀裂が入っていました.

通常この時点で抜歯ですが、手を尽くした結果抜かなければいけなくなる可能性もご理解いただいた上で歯を残す治療を開始しました.

 

a)亀裂部分を確認、補修する為に歯肉の上まで歯を見えるようにする処置をしました(クラウンレングス)

b)術後3週間後、歯を破折から守る為、補強をした上でラバーダム防湿

c)顕微鏡を用いて根管治療

d)破折している部分を顕微鏡で確認しながら接着

e)硬い金属の土台では、歯が割れてしまう為、歯と同じ位の硬さの土台をたてる

f)仮歯で負担がかかっても問題ないのを確認した後、最終的な歯を入れました(ジルコニアセラミックス)担当、湘南セラミックス 白石

 

患者様のご理解が得られた為、難しい歯を残す事ができました.

歯医者冥利につきる瞬間です(歯を残すのが我々の本分です)

 

矢印部が破折している箇所
矢印部が破折している箇所
顕微鏡、ラバーダム診療中
ラバーダムをして中を綺麗にしました