色にこだわる

色の3要素「明度・彩度・色相」
 
まず、歯の色を見るために絶対に必要な知識とし て、色の3要素「明度・彩度・色相」があります。 さて、図1はマンセルカラーシステムにおける色立体の概念図であり、色の3属性に基づき、色彩を体系化したものです。この図は、垂直の軸が 明度、円形の周囲が色相、垂直の軸に対して水平な長さが彩度となります。色のすべての要素がこの図に入っているのです。
 
明度とは
色の明るさを示しま す。簡単にいえば、白から黒までの色の変化のことです。これが、歯の色を見るうえでいちばん重要な要素だと考えられます。
口腔内写真は通常カラー写真ですので、慣れないうちは明度を見分けづらいものです。そこで最初のうちは、コンピュータなどで白黒写真にして彩度と色相を排除し、明度を観察することも一案です。
なお、被せ物の色が合わない多くの失敗例は明度に起因するもので、口腔内で白浮きしたクラウンになります。
 図1は、シェードガイドを明度順に並べ替えそれをカラー写真と白黒写真に収めたものです
明度は、このように白黒写真にするとよりよく観察できます。このシェードガイドにはA系統からD系統までの色がありますが、基本的にはそれぞれの系統ごとに数字が大きいほうが明度が低くなっています。(D系統を除く)このことにを利用し明度を選ぶ際にはまずA系統のシェードタブのみから目標歯に近いものを2,3本選ぶと簡単です。
 
彩度(Chroma)とは
彩度とは、色の鮮やかさを示します。図2の縦軸を見ていくと、上端が彩度がいちばん高い原色であり、下端にいくにしたがって、どの色も無 彩色(グレー)になっていき、彩度が低くなっていくことを示しています。口腔内、とくに前歯部において、彩度は中切歯から犬歯に向かって高くなります。図3を見ると、犬歯が他の歯に比べて全体がオレンジ味を帯びていることがわかります。これは犬歯の象牙質 が他の歯に比べて厚いために、エナメル質を透過して見えるのです。
 
色相(Hue)とは
 
色相とは、色の種類を表します。赤、黄、緑、青、紫が基本で、それぞれの中間の色、黄赤、黄緑、青緑、青紫、赤紫の10色が基本になります。図3の横軸です。簡単に言えば、色が赤い、青いと感じる色合いのことを示します。シェードガイドではA系統からD系統までの分類がこれにあたり、A系統がReddish-Brown(赤みのある茶色)、B系統がReddish-Yellow(赤みのある
黄色)、C系統がGray-Shade(グレー)、D系統が Reddish-Gray(赤みのあるグレー)と分類されています。それぞれの系統の中でもっとも数字の大きいものを比べてみると理解しやすいと思います。

天然の歯は象牙質とエナメル質で色が構成されている

 天然歯はおおまかに分けて象牙質・エナメル質の2つの部位で構成されています。 天然歯の色に関しても同様で、この2つの部位により構成されていると考えられます。 象牙質は天然歯の基本的な色相と彩度を、エナメル質は天然歯独特の白さと、透明・不透明感を決定付けます。また、エナメル質は白色の半透明の色をもち、基本的に歯頚部付近では薄く、切縁付近では 厚みをもちます。これが天然歯の色を見るうえで、 最低限の知識となります。

 これを踏まえたうえで、その他の天然歯の色の構成要素として、天然歯が先天的にもちあわせている個性を知っておくとよいと思います。

 

 具体的には、象牙質に存在するマメロンの色、セメント・エナメル境の色および蛍光性、エナメル質に現れるオパール効果、白帯の存在などとなり、 これらの有無や多少または濃淡などが、複雑な天然歯色を形成しているのです。